吉田寮問題にかかわる教員有志緊急アピール

京都大学の教員有志が主体となって「吉田寮問題にかかわる教員有志緊急アピール」を発表しました。 呼びかけの主な対象として想定しているのは京都大学の教授会構成員ですが、一般の方にもご賛同いただけます。賛同の受付は終了しましたが、今後も関連情報などをアップしていく予定です。

賛同者からのメッセージ集(2月21日8時現在まで)

◯藤原辰史さん(呼びかけ人)のメッセージ

執行部のなかで寮生に対する不信が「創出」されているような気がします。吉田寮生に対する一方的なイメージを「創出」して、そうだそうだと同意して、それを元に寮生への対応が進められているような気がします。大学での学問の訓練の過程でわたしたちが学んだのは、そんなときに、まわりの空気に流されず、敷かれたレールから降りて、冷静になって事実と向き合うということでした。良識ある学問の担い手であれば、いまから団体交渉約束の破棄の段階にまで戻って検証することもできるはずだと信じています。

◯高山佳奈子さん(呼びかけ人)のメッセージ

これまでの経緯や学生の提案を無視した朝令暮改の措置は、京都大学の歴史と社会的評価を著しく傷つけ、基本的人権を侵害しています。京大の文化的価値と信用を取り戻しましょう。

◯木村大治さん(呼びかけ人)のメッセージ

以前、学生生活委員会第3小委員会(寮問題等担当)のメンバーでした。大学側の立場、寮生側の立場、双方をそれなりに理解しているつもりです。(その均衡点である「団交」に出席するのは、大変だが貴重な経験でした。)しかし今回のように、大学側が、これまで長年にわたって続いてきた寮との関係を、突然掌を返したように変更して強圧的な態度に出るのは非常に不自然に感じます。寮生側も歩み寄りの姿勢を見せているわけですから、大学側も問答無用という姿勢は改めるべきだと思います。これは本学教員の多くが感じていることではないでしょうか。

◯山岡幸司さんのメッセージ

だいぶ前の卒業生です。学生寮の自治破壊に反対です。当局はいったい誰のために管理強化にこんなに熱心なのか、そこからどういう利益を得ようとしているのか、実は自らも認識できていないのかもしれない。恥ずかしげもなくすぐ前言をひっくり返す、論理も理由もないふるまいには安倍政権と通じるものを感じます。

◯「匿名希望」さんのメッセージ

緊急アピールに賛同します。大学には、自由と対話を根幹とするという基本理念に立ち返り、困難な道のりであっても、寮生およびすべての関係者との対話による解決を目指していただくことを願っています。

◯文山達昭さんのメッセージ

熟議を経ない民主主義はない。いまの京大のあり様は現政権と重なるところが大で卒業生としては失望しかありません。

◯井上明彦さんのメッセージ

もと吉田寮生です(1977?1980)。川添信介副学長の一方的な暴力およびそれと結託した京大執行部の暴力をただちに停止し、京大の建学の理念に立ち返ることを京大すべての教職員に求めます。

◯李栄恵さんのメッセージ

時代の変化とともに吉田寮も常に変わり続けてきたと思います。同時に、けっして変わらないものもあるはずです。だからこそ今まで続いてきたのだと思います。その流れを一時の経営判断で断ち切らないでほしいと思います。木造の建物保存そのものよりも自治の精神をこそ大事にしてほしいです。

◯芦刈成人さんのメッセージ

今回の京大当局の問答無用のやり方は、看過できません。
自由こそがレゾン・デトルの京大にあるまじき強権発動です。
同窓生の一人として、強く抗議します。

◯ひびの まことさんのメッセージ

「吉田寮は廃寮ではないが自治は容認できない』京大執行部が主張」
「居住する条件は『自治を行わないこと』誓約が必要」
「自治をやめれば住み続けてもいい 京大執行部が条件」
一般紙であっても、本来、新聞の見出しはこうあるべきだった。

▼川添副学長でさえ、これまでは曲がりなりにも「吉田寮生の安全確保」こそが目的だと言ってきた。しかし2月12日に京大執行部が発表した吉田寮に対する方針(と川添副学長の記者会見)は、吉田寮で行われている自治・自主管理や吉田寮自治会それ自体を解体することを、彼らが意図していることを宣言したものだった。少なくとも、吉田寮自治会と京大執行部の双方の主張を追ってきた者にとっては、今回の京大執行部の方針を直接読めば、それはあまりに明らかだった。
▼にも関わらず、新聞各紙の見出しは「京大、吉田寮新棟の居住認める 退去問題で一部方針転換(京都新聞)」などと、事実とは異なるイメージをつくり出すものだった。実際に私の友人も、新聞記事だけを読んで「吉田寮に今後も住み続けられるみたいだね(ハート)」などと言い出す人までいた。京大執行部による印象操作が、実に上手くいっていた。
▼そんな状況だったからこそ、この間の京大内部でのいきさつを知る教員達から『大学執行部の本当の狙いが「寮生の安全確保」ではなく、自治寮としての性格の解体である』と正確に指摘するアピールが出されたのは、時宜にかなったことだったと私は思う。
▼もう一つの見方として、吉田寮自治会の闘いの成果として「大学の指示を無視して新棟に住み続けた吉田寮生の居住を、条件付きではあるが大学に正式に認めさせた」という言い方もある。しかし「寮生の安全確保のため」に耐震性に何の問題もない吉田寮新棟からも出て行け-という京大執行部の従来の主張は論理破綻しており、そもそもその実現は困難だ。そこでむしろ逆に、「新棟からの全員退去強制はしない(できない)」というカードを、いずれ切らざるを得ないのであれば、できるだけ高く売りつけようとしているのが、今の状況なのではないか。
▼はじめから問題は「老朽化」「寮生の安全確保」ではなく、寮自治の破壊だった。大学の間違った指示に従うのではなく抵抗し、あくまで話し合いを求め続けた吉田寮自治会のこの間の闘いのおかげで、そのことを、彼ら自身が白状せざるを得ない状況にまで追い込んだ、と言うと言い過ぎだろうか。実際、「老朽化」が問題にされた現棟については川添副学長が「建築物としての歴史的経緯には配慮する。引き続き寄宿舎として使う」と言っており、吉田寮自治会との話し合いさえ行われれば、一定の合意を形成するのは、私には可能に思える。
▼逆にいえば、既に京大執行部でさえ、吉田寮は廃寮にはしない、建物は残すと言っている。そこまでは言わせることが出来たのだ。あとはそれが自治寮であるかどうかだ。京大執行部による管理か、それとも寮生による自治か。争点は明確になった。
▼もちろん、大学の自治をめぐっては、形だけ(になりつつある)とはいえ大学組織の意思決定過程に関与できる教員と、学生や市民達との間には、別の緊張関係がある。教授会自治ではなく、学生や職員も含めた大学自治へ。学生や教職員だけではなく、近隣住民や市民も含めた大学の自治へ。そういった実践を続けてきた吉田寮だからこそ、まさにその自治と自主管理の実践が、攻撃を受けている。
▼それはつまり、教授会自治さえ奪い、役員会などごく一部の人間によるトップダウンの大学運営を行おうとする者たちとの闘いであり、またそれを許している教員達との闘いでもある。その意味では、教員に過剰な期待は禁物だ。
▼役員会だけ、教授会だけ、教職員だけ、学生だけ、ではなく。近隣住民や市民も含めた大学の自治を、京都大学の場で作りだしていくために!それぞれの立場から、ともに闘おう!

◯中津めぐみさんのメッセージ

京都大学の歴史ある校風(自由、自主、自立、自治)が否定されてはならない。吉田寮、及びタテカン問題の根本はこれです。それは、ひいては京都全体のあり方にも繋がっている。それだけに、しっかり勝ち取らないといけないと思います。対話が広がり、本質が見え始めた今、学長はじめ、多くの識者にもより見えてきたのではないだろうか。粘り強い運動、そして対話にて、もっと広がっていくようにと応援します。

◯足立芳宏さんのメッセージ

趣旨に賛同します。また寮自治の重要性にも同意します。ただ複雑な経緯を辿り、傍目には判断が非常に難しい案件で(ほとんど情報がないのですが)、従来の寮自治のありようにも反省する点はあるのではと思っています。吉田寮のみならず、熊野寮、女子寮も含めて寮自治のあり様を議論する必要があるとも思います。

◯「匿名希望」さんのメッセージ

吉田寮は一見、よくわからないカオスのような存在ですが、立場の弱い人を受容してきたシェルターのような存在でもあるように思います。何でもかんでもキレイにしてしまえばいいといものではないと思います。

◯鈴木淳史さんのメッセージ

大学等の学校は流動的な組織であるため、一度伝統が失われると、なかなか取り戻しにくい。
だからこそ、自主管理の伝統を決して失ってはいけません。
権力の濫用を新たな伝統にしてはいけません。
応援してます!

◯「匿名希望」さんのメッセージ

立て看が消え、変わり果てた京都大学の姿は嘆かわしい。そこかしこで自由な言論が紡がれ、それゆえつねにガヤガヤした雰囲気のあった正しい京都大学の姿は、今日、吉田寮周辺のみに残っている。その吉田寮が消滅することは、大学において発言が許されるのはひとり当局のみであるとする権威的で威圧的な全体主義的統治をいっそうのさばらせるだけだ。吉田寮問題で危惧されながら、いまだ表だって議論されていない問題のひとつは、跡地の利用である。特定の理事が当局にプレッシャーをかけ、特定の研究科のみの利益にかかわるいかがわしい施設の建設を目論んでいるという噂は聞き捨てならない。そうした見えざる意図を封印したまま、「安全性」という目先のお題目に議論をすり替え、居住者の言い分にいっさい耳を傾けないという欺瞞は糾弾されてしかるべきだろう。

◯植田智道さんのメッセージ

一方的に吉田寮の自治を奪うことは、自らこれまでの京都大学の歴史や個性を否定しているようなものです。学生との話し合いの場を持って欲しいです。