吉田寮問題にかかわる教員有志緊急アピール

京都大学の教員有志が主体となって「吉田寮問題にかかわる教員有志緊急アピール」を発表しました。 呼びかけの主な対象として想定しているのは京都大学の教授会構成員ですが、一般の方にもご賛同いただけます。賛同の受付は終了しましたが、今後も関連情報などをアップしていく予定です。

賛同者からのメッセージ(3月3日12時現在まで)

◯小関隆さん(呼びかけ人)のメッセージ

今からちょうど100年前、パリで開かれていた第一次世界大戦の講和会議でキーワードとなったのがself-determination でした。「民族自決」と訳されがちですが、「自己決定」の主体は民族とは限りません。よく知られている通り、このキーワードには多様な解釈を許す曖昧さがあり、少なからぬ紛争や悲劇の火種となったことは否定できません。とはいえ、紆余曲折はあったにせよ、以降の世界が「自己決定」の権利を尊重する方向で努力を重ねてきたことも事実です。吉田寮の問題もまた、こうした1世紀にわたる大きな歴史の流れの中にあります。

◯渡邊義明さんのメッセージ

1964年文学部入学、1965年6月から1967年4月(熊野寮に転寮する)まで吉田西寮にいました。
緊急アピールに賛同いたします。
寮生が築いてきた寮自治の伝統をまもり、大学当局に吉田寮の存続と大規模修繕のための協議の場所を求めます。
ところで、当局の責任者の肩書きが副学長のなっていますが、いつからそうなったのですか。
小生が在寮した当時の交渉相手は総長本人でした(少なくとも1969年学生部封鎖までは)。例えば、1966年12月熊野寮の暖房闘争(12月になってもスチームを入れない)、その交渉途中に逃亡した奥田東総長を連れ戻して暖房を認めさせました。そしてその連れ戻した小生の行為を理由にした停学処分を総長官舎に深夜乗り込み撤回させましたが。
安倍内閣・文科省の命令に従う大学管理体制の完成を阻み、反転攻勢するために、大学内外の力を合わせましょう。

◯「匿名希望」さんのメッセージ

吉田寮をとりまく色々な慣習はひとつの文化と呼べるものであり、また様々な文化を育んできた重要な下地である。吉田寮をめぐっては、それぞれの立場から色々な人が色々な意見を持っていると思われるが、それらの意見が正当に話し合われることなく強引に事が進められようとしていることが一番の問題である(これに関しては立て看についても同様のことが言える)。
対話を失った京大は「自由」であるとか「おもろい」とは到底思えない。吉田寮をどうするべきか判断する際には真っ当な議論が必要である。

◯「匿名希望」さんのメッセージ

自分は多様性を認めた上で対話による調和を大切にする京都大学が好きで、そこに通い多くを学ばせていただいたことを誇りに思っている。ところが今回のような不当権力の行使は京都大学の良さから最も遠い行為であり、OBとして残念でならない。当局は今までの対応を自省し、大学の原点に立ち戻って態度を改めた上で学生との真摯な対話に臨むべき。

◯島津瑠美さんのメッセージ

京都大学の学生自治を守るために、立ち上がっていただいた先生方に、先ずお礼を申し上げたい心境です。
社会から、そして、大学から秩序がどんどん壊れている状況を危惧しています。微力ではありますが、何かお役に立ちたいと思います。
皆様 ご苦労が並大抵ではないのではないかと拝察致しますが、どうぞ頑張っていただきますよう よろしく お願い致します。

◯福島直樹さんのメッセージ

吉田寮が大学自治の継承・発展に少なからず貢献できるだろうことに縛られすぎて、地域社会に息づく多様性や活力の源泉としての吉田寮の潜在力を見抜けずにいたことに、私は一寮生として、いま深く反省しています。吉田寮の自治の実体的内容は、一片の規定にあるのではなく、寮生と元寮生、学生、教職員、そして地域住民にも開かれた真剣な討議と行動に基づく課題解決の過程にこそあったのです。山極さん、この議論の輪に加わりませんか?

◯米田量さんのメッセージ

京都大学がこのように強権的で対話のないあり方をとることに大きく失望しました。実際の行動とは真逆のスローガンを社会に投げかける大学の欺瞞性を反省し、誤魔化しではないかたちで寮生との対話をはじめてほしいです。

◯蒔田直子さんのメッセージ

長年京大の近くに暮らしてきた近隣住民として、管理化、画一化が進む大学構内にあっても、学生の自由な創造力が残された吉田寮を誇りにしてきました。子どもたちや地域にも開かれた吉田寮は、町の大切な宝です。吉田寮生の対応は一方的で民主主義のルールを踏みにじる大学よりも、よほど冷静で成熟していると思います。大学当局は見苦しい対応をやめて、学生を大切に、真摯な話し合いに応ずるべきです。安倍政権のミニチュア版はやめましょう。

◯「匿名希望」さんのメッセージ

学生時代、および卒業してからも吉田寮食堂のライブイベント等に参加し数多くの出会いや学びを得ました。
吉田寮が文化的な土壌として豊かなのは、寮生の自治により、吉田寮に集う人たちの多様性が担保されていることが源泉となっていると感じます。
今回のこの一連のやりとりを見ていて、大学側が問答無用に自治を剥奪しようとしている(ように見える)ことは、残念です。
少なくとも大学は寮自治会ときちんと対話をして、当事者間で納得のできる方向性を見出していただきたい。